旅立ちの日に

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「きっかけかぁ……」 凛はそう呟いて少し思い返してみた。 陸に初めて会ったのは4月。 それまで白河 陸という名前は聞いたことがなかった。 陸自身も、中学生の頃は佳作や選外ばかりだったと言っていた。 つまり注目を浴びるような絵を描いてはいなかったということ。 それは4月当初の陸の絵を見てわかっていた。 もっとも、その頃から陸の絵は引き付ける『何か』があった。 だから高校に入って技術を学び、表現の幅が広がって、腕をあげていった。 事実、陸は銀賞や銅賞を何度もとったし、凛が出さなかったコンクールでは金賞もとっていた。 そして今回、雪花展という大きなコンクールで金賞をとった。 『星降る峰で描く花』と名付けられた絵。 思い返してみると、海が描かれていたわけではないが、たしかに凛が描きたいものに近いものがあった気がした。
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