旅立ちの日に

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そしてその絵を描く前の陸を思い出してみた。 最初に思い出したのはクリスマスパーティーの時の陸。 あの時、存在自体が希薄になっていると感じた。 そして冬休みが明けた時、陸は学院に来ていなかった。 そしてやっと来たと思ったら、いつもウォークマンをつけていた。 フランス語の勉強だとわかったのは後のこと。 そしてその勉強は今日、旅立つ時のため。 コンクールの結果が出る前からしていた。 陸のことだから少なくとも、自信満々というわけではなかっただろうと思う。 それでも、陸はそれをやめようとはしなかった。 結果が出てから今日まで、陸はいつも通り笑っていた。 いつも通りの陸だったが、何かが違っていたように感じていた。 ふっ切れたのか、覚悟なのかはわからないが、一回り大きく感じていた。
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