過去の海、今の海

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さやかは真っすぐ凛の目を見て尋ねた。 「描きたい?それとも描かなくちゃいけない?」 「……!」 凛はその言葉に、悲しげに顔をゆがめた。 「……つまり、本当に描きたいものじゃないから描けないってこと?」 さやかはその問いに首を振った。 「それはあくまで結果だと思う。その前にもう1つあって、それが理由だと思う」 その答えに、凛は今にも泣きそうな顔になった。 「……俺……わからないよ」 すると、さやかは凛の頭をそっと撫でた。 「凛はわたしと一緒なの。わたしは隆志が死んでから前に進めなくなった。凛も、おじさんたちの死から立ち止まってる」 そこまで言うと、さやかは膝の上に座っている美月を抱き上げ、凛に抱くように促した。
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