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さやかは30分ほど電車に揺られた場所にある、小さな墓地に来ていた。
そして1つの墓の前で、愛娘の美月を抱いて立っていた。
時間は午前11時。
その墓に眠っているのは、河島 隆志。
さやかが心から愛した夫。
そして美月の父。
うだるような暑さの中で1時間以上、黙って立っていたが、さやかはポツリと呟いてその沈黙を破った。
「ねぇ、隆志。わたしね、凛に結婚してほしいって言われちゃった……」
当然、返事はない。
それでも、さやかは胸の奥に溜まった想いを告げた。
「わたしのこと、愛してるって言ってくれたの。正直ね、すごく嬉しかった。……でも、凛は弟だから、……弟だったから、それ以上に困ったの」
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