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「……凛くん、やっぱり反応しないのか?」
隆志が凛の顔を見てさやかに尋ねると、さやかは両手の拳を握り、俯いて頷いた。
「……うん」
「……やっぱり、辛いよな。
おじさんたちと仲良かったし、本当に大好きだったもんな。
それなのに、事故の時、ずっと意識があったんだろ?」
「……らしいね」
さやかは凛の手を取り、涙まじりの震える声で言う。
「……なんでなんだろう。
おじさんも、おばさんも、いい人だったのに……。
凛だって、何も悪いことなんてしてないのに……」
堪えられずに涙を流すさやかの頭に、隆志は励ますようにポンと手をおいた。
「本当は、俺も事故を起こしたオッサンをぶん殴りたいとこだけどな。
向こうも死んでるんだ。
死んだ人間の悪口やら、恨み言を言うのはやめにしよう。
その分、これから凜くんを支えてやろう。
凛くんは俺たちの弟で、俺たちは凜くんの兄ちゃんと姉ちゃんなんだからさ」
隆志の言葉にさやかは黙って頷く。
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