壊れた心

16/19
前へ
/374ページ
次へ
「叔母さん、本当に絵が上手だったよね。 遊びに行ったら絵の具の匂いがしてきて……」 「顔に絵の具つけて出て来るんだよな、おばさんと凜くんが」 「赤い絵の具の時は血と勘違いして、隆志が救急車呼ぼうとしたり」 「いやいやいや、俺じゃなくてさやかだっただろ!?」 笑いながらそんなことを話していると、2人は常に視界に入れているよう心掛けていた凛の姿に驚いた。 相変わらず表情に感情は感じられない。 それでも、今まで何の反応もなかった凛の目から、涙が零れていた。 「……凛?」 さやかは身を乗り出して凛の顔を覗き込む。 涙が流している以外、何の変化もない。 それでも、この涙はきっかけになるのではないか。 そう思ったさやかは、慌ててナースコールを押し、医者に来てもらった。
/374ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2831人が本棚に入れています
本棚に追加