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「叔母さん、本当に絵が上手だったよね。
遊びに行ったら絵の具の匂いがしてきて……」
「顔に絵の具つけて出て来るんだよな、おばさんと凜くんが」
「赤い絵の具の時は血と勘違いして、隆志が救急車呼ぼうとしたり」
「いやいやいや、俺じゃなくてさやかだっただろ!?」
笑いながらそんなことを話していると、2人は常に視界に入れているよう心掛けていた凛の姿に驚いた。
相変わらず表情に感情は感じられない。
それでも、今まで何の反応もなかった凛の目から、涙が零れていた。
「……凛?」
さやかは身を乗り出して凛の顔を覗き込む。
涙が流している以外、何の変化もない。
それでも、この涙はきっかけになるのではないか。
そう思ったさやかは、慌ててナースコールを押し、医者に来てもらった。
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