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その後、医者に診察してもらうと、隆志に凛のそばにいてもらい、さやかと早苗が説明を聞きに行った。
「単刀直入に言うと、容態は変わっていません。
あの子の心は閉ざされたままです」
「……そうですか」
さやかと早苗は少なからず落胆したが、医者は言葉を続ける。
「ですが、きっかけにはなる可能性は高いです」
「本当ですか!?」
さやかが身を乗り出して尋ねると、医者はゆっくりと、大きく頷いた。
「お母さんが描かれた絵の話をしていて涙を流したんですよね?」
「はい」
「それでは涙の理由は2つ考えられます」
「2つ、ですか?
お母さんとの思い出じゃないんですか?」
さやかは疑問に思って尋ねた。
凛の前では、意図的に亡くなって両親の話をしてこなかった。
だから、凛の涙を見た時、両親のことを思って泣いているのだと思った。
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