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加速する。
好きという気持ちが。
ブレーキをかければ
その度にキィキィ鳴って。
止まれないと訴える。
進まなきゃ。
俺はベッドから起き上がり
近くにあった携帯電話を
手探りで捕まえた。
8:54
例えぶつかって擦って躓いて転けて膿んで
傷む所が増えていくことが
分かっていても。
電話の主は 3コールで出た。
「話したいことがある」
「ん?翔……?おはよう。どした?」
「あぁ,おはよう」
しっかりと息を吸って。
言うんだ。
「……好きな人が出来たんだ」
「…………」
「別れよう」
「………,そ……うだねっ。そっか……」
「ごめんな……。香織といると落ち着くし……好きだった」
「………」
聞こえてしまった。
「いつも明るいし,周りを元気にしてくれる。……一緒にいてくれて,ありがとう。
今,香織は泣いている。
「ばいばい……」
ツーツーツー
慰めるのは
もう俺じゃない。
零れたのは
罪悪感からなのか。
右目からだけ。
それは伝っていった。
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