第一話 終末の都市 OUT SIDER'S HILL

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 ゴミ捨て場にぼろ切れがうずくまっていた。  ん? ゴミ捨て場にゴミが捨ててあるのは当然じゃあ無いかって?  違う違う、ゴミじゃない。  居るのはぼろ切れと見間違う程に不潔な浮浪者だよ。  言い方が悪かったな。  ぼろ切れがうずくまってるんじゃ無くて、ぼろ切れみたいな奴がうずくまってるんだ。  ただ、あんまりにもそいつが汚かったから、ついついぼろ切れなんて言っちまっただけさ。  でもさ、仕方ないよ。  だってそいつが着てるのは元がコートだか毛皮だか毛布だか全く判別できないぐらい風化した布切れだったし、足は裸足で、足の裏の皮が鞋みたいに分厚くなってたし、腰まである黒髪はすっかり色褪せて鈍色だかなんだか良く分からない色彩だ。  おまけに躯の方は、どんだけ栄養失調の餓鬼でもここまでは痩せんだろう、それぐらいガリガリと来たモンだ。  今日日、犯罪の温床と呼ばれるこの『OUT SIDER'S HILL』でも此処まで気合いの入った乞食は居ない筈。  まぁ、唯一の救いと謂えば、顔かな?  そいつの顔は灰で煤けて頬はこけてはいるものの、瞳はスッと切れ長で鼻は高い。  そして唇は渇きながらもぷっくらと妖艶。  一言で言うなら童顔気味の美形。     スーパー  それも超がつくほどの美人さんだった。  しっかりと身なりを綺麗にして、ちゃんとご飯食べて、ちょっとお化粧でもすりゃあ、男娼になるのも楽勝だろうな。  あっという間に売れっ子、間違いナシ。  それか稚児になって何処かの変態親父に囲われるも善し。  それぐらいの器量良しだった。  そんな野郎が何でこんな道端で転がってんだろうな?  マトモに考えてその方が絶対良いのに……。  ま、この街にはアタマがマトモな奴なんざ、俺が知る限り一人も居ねぇから、こいつにマトモな意見を求めても無駄ってモンだがな。  なんせ、此処は終わってる奴等しか流れ着かねぇ終わってる街だから、全く以てあいつも終わってるに違ぇねぇ。  所詮浮浪者ってのは世間から弾かれた、  DROP OUTER 『落ちこぼれ』。  用は汚い街で汚い奴が汚い所に居る。  ただそれだけの話さ。
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