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「《シルバは此処でも僕を縛るの?友達作っていけない。人を簡単に信用してはいけない。人混みには行ってはいけない。そうやって縛って僕を守っているのは、分かっているよ。けど、僕はそれを望まない》」
「入学手続きは、学園の理事長に会えば対処してくれます。ですから先ずは、学園に行き理事長に会うことが先決です」
「へ~。ジャ理事長の所まで、案内してくれますか?」
カイリいやルヴェルディの顔は、店員さんとの会話をしていて、目元や口元が歪む事はなかったが
長年の付き合いで、ルヴェルディが必死に泣きそうになるのを押さえ込んでいるのが分かった。
「《俺はカイリだ。カイリ・キーイナだ!!俺は僕じゃない。下界に降りた時から僕は俺だ!!それではいけない?それだけじゃ、通って良い理由には成らない?》」
そう必死にシルバに伝えようとする声は……念話だからこそだろうか店員との会話では口調を乱さなかった声も、まるで幼子が泣いているかのように震えていた。
「《………ふぅッ》」
――今回は仕方ないか……。
「そうですね。案内していただけませんか?ニーナさん」
シオンはニッコリと笑って
店員であるニーナさんを見た。
「お客さん……喜んで!!」
シオンがそう言うとニーナさんは頬を薄紅色に染めて、上擦った声で答えた。
「有難うございます」
「あのお客さんのお名前は…」
「シオン・アルバーナといいます」
もじもじとしているニーナさんを横目に、シオンはカイリの方を見た。
カイリは目を真ん丸くしていた。
余程驚いた様だ。
「《シルバ良いのか?》」
「《シルバ?誰の事言っているんだ。カイリ?俺の名前はシオンだろ♪》」
シオンが笑って言うと、こちらは最高の笑顔が帰ってきた。
思わぬ攻撃に、鼻血が出そうになるのを片手で押さえながら、シオンはこういうのも悪くないと考えていた。
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