1303人が本棚に入れています
本棚に追加
シルバはまるで何かに脅えている魔獣みたいだった。
暫くしてシルバは、何も無いと分かったのか警戒を解いたみたいで。
ゆっくりと、俺の口から手を離していった。
俺は直ぐにでも『シルバどうしたんだよ』と聞きたかったが、シルバの真剣なその顔がそれを許さなかった。
「良いですか。ルヴェルディ王子様。貴方様や貴方様の御父上様の御名前、そして私(ワタクシ)の名前は、此処下界でも知れ渡っております。その御姿までもが。これがどういう事か、貴方様が分からないはずがありませんよね」
「分かるよ。そんな事」
今この下界の一部では魔界の住人の事を、良く思っていない人々が少なくとも、大小合わせた約52の国々に多く住在している。
此処下界は大小合わせて55の国々が実在している。その中のたった三国。魔界の人々に否定的でない国も、一つは中立国。二つの国の一つは小国――アリエス。
もう一つは帝国――帝国シャルデラ。大陸のほぼ全域を治める四帝国の一つと謡われている。
だが、帝国ゆえ何時ほかの帝国の圧力に負けて、反魔族側に寝返るかもわからない。
「ですから、失礼ながら此処下界での貴方様の御名前は、カイリ・キーイナとさせていただきます。私の名はシオン・アルバーナです。良いですか。くれぐれも貴方様の本名。ましてや真名を明かしてはいけませんよ。」
そう言うシオンもとおいシルバは、ただのシルバとしてでは無く、『守護隊零番隊長』としての言葉だった。
俺は静かに頷く事しか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!