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「後、失礼ながらこれを」
「何コレ?」
シオンにそっと渡されたのは、黒くモジャモジャとした毛魂と、黒のカラーコンタクト。そして黒縁眼鏡だった。
「変装道具です」
淡々と言うシオン。
俺は、その言葉に『見て判りませんか』と言う言葉が隠して、在るように感じてならなかった。
「それく」
「『それくらい魔法で出来るよ』とでもおっしゃる気ですか?」
「うっ!!」
俺は思わず固まってしまった。
図星だったのだ。
――…良く解ったな!
「はぁ~~。いくら付き合いが長いと、思っているんですか。貴方様の考えそうな事はある程度解りますよ。コレ位読め無くてどうするんですか」
――そう言うもんなのか?てか、マジで俺の心読んでるし。
「そう言うもんです(実はヴェルの顔に書いてあるんだけどな)。ともかく、魔法で容姿を変える事はなりません。人の魔力量は貴方様が考えるほど多くないんです」
人の魔力量は各国で違いがあれど、平均的な悪魔の魔力量の十分の一と言われている。
各帝国に住んでいる王族や貴族に関しては、平均的な悪魔の魔力量と同等もしくは、ソレ以上と言われている。(あくまで、平均的な悪魔の魔力量のため人が魔界に攻め入ることは無い。俺や魔王やその側近に限っては、その数千倍……否ソレ以上だからな)
たまに、王族でも貴族でも無い。平民から悪魔を遥かに凌ぐ魔力を持った者が現れるが、貴族に殺されるか他の平民に化け物と罵られるして、一人孤独に死ぬ。
「ですから、これを」
「あぁ分かった。着ければいんだろ…シオン」
「はい」
『この世は、魔力によって支配された逝かれた世界』
俺はふと、昔シルバが呟いていた言葉を思い出していた。
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