◇・始まり・◇

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「後、失礼ながらこれを」 「何コレ?」 シオンにそっと渡されたのは、黒くモジャモジャとした毛魂と、黒のカラーコンタクト。そして黒縁眼鏡だった。 「変装道具です」 淡々と言うシオン。 俺は、その言葉に『見て判りませんか』と言う言葉が隠して、在るように感じてならなかった。 「それく」 「『それくらい魔法で出来るよ』とでもおっしゃる気ですか?」 「うっ!!」 俺は思わず固まってしまった。 図星だったのだ。 ――…良く解ったな! 「はぁ~~。いくら付き合いが長いと、思っているんですか。貴方様の考えそうな事はある程度解りますよ。コレ位読め無くてどうするんですか」 ――そう言うもんなのか?てか、マジで俺の心読んでるし。 「そう言うもんです(実はヴェルの顔に書いてあるんだけどな)。ともかく、魔法で容姿を変える事はなりません。人の魔力量は貴方様が考えるほど多くないんです」 人の魔力量は各国で違いがあれど、平均的な悪魔の魔力量の十分の一と言われている。 各帝国に住んでいる王族や貴族に関しては、平均的な悪魔の魔力量と同等もしくは、ソレ以上と言われている。(あくまで、平均的な悪魔の魔力量のため人が魔界に攻め入ることは無い。俺や魔王やその側近に限っては、その数千倍……否ソレ以上だからな) たまに、王族でも貴族でも無い。平民から悪魔を遥かに凌ぐ魔力を持った者が現れるが、貴族に殺されるか他の平民に化け物と罵られるして、一人孤独に死ぬ。 「ですから、これを」 「あぁ分かった。着ければいんだろ…シオン」 「はい」 『この世は、魔力によって支配された逝かれた世界』 俺はふと、昔シルバが呟いていた言葉を思い出していた。
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