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「こんなんで良いのかシオン?」
そう言って変装道具を着けて隣の部屋から出てきた、ルヴェルディもとよりカイリは少しハネている鬘を片手で撫で付けながら、チョコンと小首を傾げながらシオンに聞いてきた。
変装前だったら、皆を悩殺しそうなものだったが、生憎と顔より一回り大きな眼鏡や少しボサボサした鬘で、この世の者かと見まごうばかりのその容姿は見えず、
ただその凛々しく神々しいばかりの雰囲気はほんの一欠けら漂わせていたが、外見が見た者にネクラとかオタクという印象を植え付けるので、その雰囲気で変装がばれる心配は無い。
「はい。問題無いようです」
「そっ。良かった。ところで此処何処?」
「中立国の王都の宿です」
「そっかぁ。んじゃこれが下界の旅人が泊まるという宿なんだ…」
「はい。そうです」
「ふぅ~ん」
俺はゆっくり辺りを見渡した。
この部屋は二部屋あり、一部屋は今居る所寝室兼リビングみたいで、少し狭いながらも用途はきちんと果たしていた。
もう一部屋はトイレとお風呂が一緒になっている、洗面所みたいな所で一面が薄い水色のタイル張りだった。
部屋自体が長年生きた木々を使っており、狭くて僅かな威圧感があるものの木々の温もりがそれを和らげていた。
――これが宿!
俺が初めて見た下界に心を奪われていると、突然後方から笑い声が聞こえてきた。
「クスクス。喜んでいただき何よりです。わざわざ下界の庶民が泊まるような部屋にしたかいがあります」
「へー此処を庶民が使うのか…わざわざ有難うなシオン!」
満面の笑み付きでシオンに礼を言うと、シオンは何故か真っ赤に顔全体を染めた。
「……ぅつ!」
「…?」
――どうしたんだ。シオン?
「…はぁ~、これから後、王都の町並み見てみます?(無自覚めっ!!)」
「本当!!?ヤッター!!シオン大好き」
「!!」
シオンに礼を言いながら抱き着くと、体中真っ赤にして固まってしまった。
「シオン?早く王都散策したいのに…」
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