死にたがり少女の生かし方

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皮肉なくらい天気の良い昼下がり。俺は真面目に席に座り授業を受けていた。まぁ受けていた、と言うのは語弊かもしれない。授業時間を失敬しパラパラ漫画を真剣に書いていた。此方が正しい。 ふと顔を上げ時計を見ればチャイムが鳴るまで三十分はある。どうやらまだ折り返し地点に入ったばかり、授業は中盤だった。 頭をシャーペンの後ろで掻いて静かに溜め息を吐く。 そして教科書を閉じ、その端を掴むと慎重に捲り始めた。 しかし努力報われず。 捲る勢いが良過ぎて数ページ残したまま教科書は閉じて微風を起こす。 パラパラ漫画という物語は予想外の展開、外的営力により未完となってしまったのだった。 死にたがり少女の生かし方 AETのジョンだったか、はたまたマイケルだったか。ネイティブスピーカーである彼の流暢な英語が耳を駆け抜ける。 やっぱ英語は意味不明。まぁ日本人だからわかんねぇのは当然か。 完成度の高いパラパラ漫画を教科書の隅に書いていた手を止め、なんとなく窓の外に目を向ける。 うわ、今日の天気すげぇいいし。今すぐ屋上でサボ……!?!? 「ジョン!俺ちょっと行ってくる!!」 まだ授業中にも関わらず席を立つ。あまりの突然の行動に周りの奴がざわざわと騒ぎ出した。 そんなこと今の俺にはどうでもいいことなのだが。 足早に教室を出る時、後ろから片言の日本語でワタシはマイクねーっ!!!!と聞こえた気がした。 だけど俺には突っ込み所を冷静に訂正する余裕さえもなかった。 もう久々に頑張って走った、多分人生一代の全速力じゃねぇかってくらいに。 「くそっ何やってんだよ馬鹿女!!」
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