1::張三李四:チョウサンリシ

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  「性格男前受けの鏡だったのに…」 「受けとか嫌ばい」 受けから受けが嫌なんて…! いや、今まで受けで妄想してたから、新鮮?でいいんだけど! 「あ。お前の本名はなんち言うと?」 夜は僕の本名が気になるみたいだ。 携帯のプロフィールには藍って名前だけ登録してるし、夜はそのまま夜だった。 「若狭藍だよ」 「藍ね。俺は神崎真夜(かんざきまや)ばい」 マ、マヤ!? 名前が…! 「…名前が可愛いとか思っちょうやろ?顔に書いちょうばい」 「え?」 「わかりやすいぞ、お前」 読心術でもあるのかな? 夜は僕の頬っぺたを捻っていた。 僕は嫌がる夜から彼氏のスペックを無理矢理聞き出してハァハァしていて、気付いたら夕方になっていた。 「時間経つの早いね」 「そうばい。あ、駅まで送るばい」 「ありがとう」 立ち上がった僕達は歩き始めたが、柱に帽子を深く被った人が腕を組んで寄りかかっていた。 「ハロー、お2人さん」 手を挙げて目の前に立ち塞がった。 「こ、香…なんでお前がおると?」 香、謎に包まれた情報屋だ。 「久々だね、神崎真夜君。僕は若狭藍君に用事があるのさ」 夜の本名を知ることなんて、香にとっては簡単なことなんだ。 それに9時に香陵駅前の公園で待ち合わせだったはず。 「藍を借りていいかな?僕が香陵まで送るから」 「お前…大丈夫なと?」 夜は僕のことを心配してくれているようだった。 「ふふ…送り狼なんてするわけないでしょ?ああ、早くて今からかなぁ?問い詰められるかもしれないね、真夜」 意味深なことを言う香に夜は訝しげな表情をした。同時に携帯の着信音が鳴った。夜の携帯だった。 「い、今から?…別にいいばってん…」 夜は携帯を閉じると、ポケットにしまった。 「今から溜まり場に来いっち言われたき、ごめんな。じゃあ電話しろよ!」 夜は手を振って慌ただしく走っていってしまった。 「…ね?今から大変だろうね、夜は」 香は口元を上げて楽しそうに笑っていた。  
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