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翔は横で笑みを深める大地に軽く視線を向け、
「お前がそういう態度ってことは女か?」
そう問いかける。
すると、大地はイヤらしげに口を歪ませ、親指を立てていた。
「昨日見たってやつがいてな、かわいかったらしい。しかもだ帰国子女なんだと」
誇らしげに言い放ち、随分と楽しそうにしている。
「帰国子女に加点要素があるのかは謎だけどな」
「なんか言ったか?」
「いや、まぁどうでもいいさ」
と、そんなに興味のない様子で翔は歩き続けている。
そのそっけない態度に不満げな顔でまだ何か言いたそうだったが、それについては見なかった事にしていた。
すでに学校の門は目の前。
「時間がやばいな、少し急ごうぜ」
腕の時計ではすでに八時二十六分。三十分からホームルームが始まるので間に合わないかもしれない。
「そんなに気にすることないだろー。ゆっくりいこうぜ」
と言って大地についてくる気配はない。
「先行ってるからな」
翔が駆け出した瞬間『待ってくれよー』と聞こえたが、翔はそれを空耳だろうとあっさりと切り捨てた。
大地を置いてきぼりにしたまま校舎の中に入り、なんで一年は四階なんだよ、と毒づきながらも階段を駆け上がる。
「ぎり、かな」
と呟きながら教室の扉を開けた。
教室の中には生徒たちが思い思いの場所でくつろいでおり、自分の机に座って話している人や、朝食を本に目を通しながら食べている人もいる。
端の方では三人の女の子が集まって談笑していたのが見えた。
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