320人が本棚に入れています
本棚に追加
先頭に立つ男の一人が一気に迫り、金属のパイプを翔に目掛けて振りおろしたのだ。
翔が、もう駄目かと思った矢先に、
「舐めないで」
彼女は自分の目の前にいる男を蹴り飛ばすと、すぐに翔に向けて金属パイプを振りおろす男の腕を掴んだ。
そのまま力任せに投げ飛ばすと、置かれていたゴミ箱などを粉砕しながら壁に衝突し、沈黙する。
その様子をまざまざと見せられ、男たちは先程の勢いを失い、踏鞴(たたら)を踏んだ。
中心人物と思しき男は歯噛みをしながら周りに目を向けると、
「ダメだ。撤退しろ!」
残っていた数人の男たちも劣勢である事を感じたのか、その指示を受けると、一斉に散っていった。
そして、その場に残されたのは翔と彼女のみ。
一瞬にして静寂の訪れたその場で、やっとの事で翔は口を開いた。
「助かった……のか?」
「そういう事ね」
ゆっくりと息を吐き、彼女はそれに答えると制服の裾をはたく。
そのまま翔と視線を合わせ、表情を変えずに淡々と告げた。
「だから言ったでしょう? あなたは狙われているって」
翔はその言葉にうんざりしながら、あの時の言葉が現実になった事を思い知らされていた。
そう――あれは先程の学校での出来事。
'
最初のコメントを投稿しよう!