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――少し前の刻、大通りの甘味屋―――…
「……ちょっと総司!
動けなくなっても俺知らないからな?」
「大ー丈夫でーすよう!
何時も私のお腹は鍛えてありますから
心配ご無用、です」
店内の一角に二人の青年が座っている。
二人とも整った顔をしている。しかし一歩間違えば女の子……そんな人達である。
だが、彼らの腰に大小が携えてあることでこの若者二人組は、お侍様であるということが伺える。
「腹鍛えてるって……何?
それより……稽古を勝手に抜け出さずに、剣の腕の方を優先的に鍛えて頂きたいのですが?沖田先生?」
一人の青年が頬杖をつき、ため息を吐く。
あからさまな皮肉を込めまくって、普段は対して使わない敬語を駆使したのだが、
目の前で甘味を食べまくる青年には効かないようである。
「でも平助!いつ何時、大量に甘味を食わされることになるか……それを想定して訓練しておかないと、腹痛という恐ろしい結末が待ち受けることになりますよ」
「……どんな状況の想定なの。きっと一生来ねーよ、んな状況」
平助――本名を藤堂平助という青年は、自分が頼んだ白玉のお椀に目を落とす。
既に空である。
「俺、随分前に食い終わったんだけど!
かなりの時間、総司待ちなんだよ?早く食べて。
……せっかく二日間続いての非番なんだから」
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