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「まあ、屯所でこいつが起きたら
ぜーんぶ聞き出そうよ。
俺早く帰りたーい……」
ふあーっと気の抜けるような欠伸をした藤堂は、笠男に興味が無くなったように
沖田を急かして帰路を急いだ。
二人が笠男――もとい、実は殺し屋の少女を連れ帰った場所。
そこはかつての壬生浪士組。
京の人々に壬生狼や人斬り集団と呼ばれて恐れられた、
幕末最強を謳われる剣客集団、新撰組が屯所を構えているところだった。
当然この二人も
新撰組の隊士であるのだが――…
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―――――――――
「………おい…何を拾ったって?」
新撰組屯所内、
少し煙管による煙たさの残る部屋。
その部屋の主、
新撰組副長の土方歳三が低い声を響かせた。
「だーかーらーっこの男ですよ土方さん。
血まみれで倒れてたんです。なんか事件の臭いがしそうなので拾ってきました」
「拾ってきましたってなぁ……
そいつ……真っ赤じゃねえか、生きてんのか?」
土方は沖田の担ぐ笠男を一瞥すると
怪訝そうな顔をする。
「気を失ってるだけです。
……確か今日隊士達の健康診断でお医者様が来る日ですよね?
一緒に見せてもいいですか?
意識が戻ったら事情を聞き出しますから」
「お前が責任持てよ?俺は知らん」
土方は興味が無くなったように、文机の上の書類に目を落とした。
「……はーい。失礼しました」
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