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朱い紐が鞘の一部に巻き付けられた、少し変わった刀を支えにして少女は立ち上がり、恨めしそうに男を睨む。
「あ? なんだその目。
文句でもあるってか?
つけ上がるのもいい加減にしろよ。
依頼を持ち込んでやって
お前が金を手に入れられる術(すべ)を与えてやってんのは誰だと思ってんだ?」
「……………」
「ははっ、お前の母親は選択肢を違えたみてぇだ。
自分の娘が今なんの仕事してるかも知らずに、金だけ送りつけられてのうのうと生きている。
こんな娘の姿少しも想像してねえだろ。」
「……うるさいうるさいうるさいっ
あんたに関係ない!!」
少女は牙を向きながら睨む。
「口だけは一丁前だな本当。
けどよ、金が稼げるっつーこと。
自分がどのくれぇ恵まれてんのかお前はもう少し理解して、有り難く思った方が良いぜ?」
「……恵まれて……?
あたしはお前のような卑劣な輩にこき使われて……どんな思いで――!」
バキッと音が響く。
少女は細い路地の脇に吹っ飛びながら
口の中に広がる胃酸と鉄の味の混ざった
苦汁を噛み締める。
「黙れ!!いちいち口答えすんな!!
はやく仕事に行け!!」
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