めぐり逢い

2/17
前へ
/261ページ
次へ
――――翌朝――…… 安宿で一晩を過ごした少女は 男物のボロの着流しを纏い、 笠を深くかぶり外に出た。 ――彼女は何時も男装である。 男でいる方がなにかと便利なのだ。 仕事着。 最初はそう割りきって着分けていたのだが、暫くの生活の内に常に男装でいる方が便利であると実感した。 その時から彼女の所有している着物の一切が男物である。 と言っても、今纏っているのと、ボロの上着と袴とを合わせて二着しか持っていないのだが。 「……はあ……」 少女は腰にさしている朱い紐の刀の柄を撫でながら、目的の場所へと歩き出した。 「うぇぇ……気持ち悪」 のったりと歩きながら腹をさする。 昨晩吐いてから何も食していないが為の、空腹感による吐き気である。 金が一銭も無いため、食事にありつけない。 それというのも、彼女は仕事柄、貧乏なわけではない。 しかし、金が入っても大半を母親のもとに送ってしまうため、彼女のもとには雀の涙ほどの金しか残らないのだ。  
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加