(一)友達の痛み

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 沙希は何か問題でもあったのだろうかと思い始めた。  もし問題があったのならスタッフの誰かが教えに来てくれてもいいはずだが、誰も入ってくる様子はない。  控室を出てスタッフに聞きに行ってみようと思った。  あまりに遅くなっていて、忘れ去られてしまったかもしれないと不安になったからだ。  控室から出ると、スタッフが何人か机を運んでいる。 「あのー、すみません」 「はい?」  スタッフは机を持ちながら、下から上へ視線を這わせるように沙希を見る。 「あれ? もうオーディション終わったけど?」 「え?」  沙希は信じられなかった。  まだ自分の名前が呼ばれていなかったからだ。 「私、石山沙希の順番がまだだと思うんですけど……」 「えー、マジで?」  スタッフは机を置いて後頭部をガリガリ書く。 「おーい、かっちん」  控室でオーディションについて説明していたスタッフがこちらに来る。 「石山さんがオーディション受けれてないって」  かっちんと呼ばれたスタッフは沙希を見て鼻で笑った。 「いいんですよ。
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