9月ハナ

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9月ハナ

 五日間のサークルの合宿の後、トモヨとペンションにアルバイトに行ったので東京の暑い夏とは無縁とは言わないまでも、ピークの真夏日だった時には、東京にはいなかった。  高校を卒業して最初の夏休み。開放されるっていうのは、こういうこと言うのかってくらいに自由な気がした。三年半後には社会人になってなければならないから、つかの間の楽園なんだろうけれど。  高原の爽やか朝にホトトギスやカッコウや名前の知らない小鳥達が木々の間で鳴いているのを毎朝聴くことができるのだから、東京の都心ではありえないことなんじゃないかな。 リゾート地に長期間いたいと考えたから、高原のペンションを選んだ。海でもいいかと思ったけれど、暑いから避暑にならない。  私はトモヨと二人で行きたかったから、二人とも運良く採用されてよかった。  トモヨともっと仲良くなれたのも収穫だった。  あの娘はお嬢様だと思っていたから、私がペンションのアルバイトに誘っても行かないだろうと予想していた。でも、トモヨは二日後に返事をしてきた。両親を説得していたからだったからなのか?その事はきかなかったけれど、トモヨの両親は厳しいそうだから。一人っ子だからかな。その点、私はお姉ちゃんがいたから、お父さんもお母さんにも免疫ができているんだろうね。私は何も言われなかった。一人っ子がうらやましいと思ったこともあるけれど。  トモヨとの仲がこのまま続いたら来年も同じペンションにアルバイトで行きたい。  ペンションでの最後の夜に、トモヨは学校に気なる人がいると言っていたけれど、今度は成就させてあげたい。自分から言い出せないから、ずっと片想いだったって言ってた。  トモヨは真面目過ぎなんだよ。  でも、気になる人がマモルとはね。私はパスです。
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