９１年

１０月マモル

　体育祭というか運動会はあったが、見に来ているのは俺達一年生ばかりで、二年生以上の人達はあまり見かけない。体育会系のサークルで好きなことをやっているから体育祭はどうでもよいってことなんだろう。

文化祭の屋台を何にするかということで、サークル内で話あったが、たこ焼きにするか焼きそばにするかで、意見がなかなかまとまらなかった。俺はたこ焼きを押したが、たこを見るだけでも嫌だという人もいたので、焼きそばになりそうだ。サークルは男ばかりなので、クレープをやりたいと言い出す奴はいなかった。アルバイトで毎日の様にクレープを焼いて包んでる俺としては、ちょうどよかったが。

　第一外国語の授業で、先生に訳を直させたリュウイチを、正直に言って見直してしまった。授業中に先生の訳がおかしいと言うこと自体、俺にはとても出来ない。That節をどう解釈するのかということだったけれど、リュウイチは文法と論理から自分のほうが正しいと言っていた。
　受身になりがちは授業だから、ちょっとした波紋をつくった感じだった。先生もそんなに嫌そうな感じではないと思った。こんな奴もいるんだなぁぐらいに思ったんじゃないだろうか。俺にはうれしそうにすら見えた。
　指摘した次の週に先生はリュウイチが正しいと認めた。俺は訳を書き取っていないが、訳を書き取っている人達には、一週間その箇所は空白というか、二つの訳が並立して存在していた訳で、リュウイチの訳が正しかったというのは、ショッキングな出来事だっただろう。

　同性としては美味しいところを持っていかれたと思った。