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両親の贔屓(ひいき)は今に始まったことじゃない。物心ついた頃から気付いていた。
私の誕生日さえ覚えていない父。
でも万優へは事あるごとにプレゼントを買ってきて自分の書斎で遊ばせる。
私に汚い服を着せる母。
万優のお下がりで綺麗な物は他人へあげ、シミがつきヨレヨレの物を私へ着せる。しかも洗濯をしてくれない。
「私はきっとこの家の子じゃないんだよ。頭悪いしブスだし」
両親が寝静まった後、万優が差し入れてくれたおにぎりをほお張りながら愚痴った。
「奈穂は要領悪過ぎ。あの人達にはヘラヘラ笑って、テストで満点取ればいいだけだよ」
万優は微笑んで答えると、テストで満点をとったご褒美の千円札をピラリと見せた。
そして机の中から赤色の木箱を取り出し蓋を開ける。
木箱はオルゴールで、カチャリという音と共に『エリーゼのために』が流れ出した。
中には千円札の他に、私が手にしたことのない万札が何枚も入っている。
でも万優はいつも悲しそうな顔でそれを眺めてから蓋を閉じて鍵をかけた。
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