【版権】夢

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「寄らないでくれるかな」 とても冷たい声。 (どうして?) 彼女の思いを見透かすように、また言い放つ。 「嫌いなんだよ、君が」 嘘。 そんなハズない。 藍さまはそんな事言わない。 お願いだから嘘だと言って。 そんな事を考えていたら、いつの間にか藍さまは私から遠ざかっていた。 待って 行かないで 嫌いにならないで どんなに追いかけても 全く追いつく気がしない。 辛くて 悲しくて 寂しくて 咄嗟に私は、声を張り上げて名前を呼んでいた。 「藍さま!」 突然 目の前が明るくなった。 それと同時に、心配そうな顔をした藍さまの姿があった。 「あぁ、やっと起きたかい、橙。 とてもうなされていたよ? 何か嫌な夢でも見たのかい?」 いつもの優しい藍さまだ。 それが分かった時、気がついたら涙があふれていた。 「……橙?どうしたんだい?」 「ら……藍しゃま……。」 涙が止まらない。 そんな様子を見た藍さまは、優しく微笑み、私を強く抱きしめた。 「きっととても怖い夢を見たんだね、橙。 大丈夫、私がついているよ。」 そんな藍さまの言葉を聞いて 余計に涙があふれ出た 「……ら、藍……しゃま……。わ……私の……ごど……嫌いに……なったり……しまぜんが……?」 「……ふふ、当然だよ、橙。私は、橙が大好きだからね。」 藍さま 私の大好きな藍さま 誰よりも優しくて 誰よりもあたたかい そんな人。 「……よしよし、さぁ、もう朝だよ。下で皆とご飯にしよう?」 「……はい!」 ……とても可愛い笑顔を作って、あの子は元気よく階段を下りていった。 橙 私の可愛い橙 とても愛らしく そして 狂おしいほどに あの子を…… 「藍さまー?どうなさいましたかー?」 下からの声にハッとして、いつもの通りに返事をしかえしておいた。 「……さて。 私も行きますか……。」 それと。 寝言で私の名前を呼んでいた事、あの子には内緒にしておこう。 -fin-
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