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「いらっしゃいませ」
その声に、「彼女」は動きを止めた。
それと共に、ゆっくりと周りを見渡し始めた。
テーブルには、私が用意したお茶と茶菓子が置かれている。
現状を把握しきれていない「彼女」に私は、
「お茶、冷めちゃいますよ…?」
と、問いてみた。
…明らかに困惑している。
それもそうだ。
「彼女」に対し、このようなもてなしをしたのはそういない、いや、私だけではないだろうか。
私には、こうするべき理由があるから…。
仮に猫を好きな人間は、猫を目の前にした時、どうするだろうか。
言動は様々でも、多分彼らは「愛される」ような行動に出るはず。
…そう、私もそうなのだ。
唯一違うのは、相手が「彼女」のような存在、だという事。
昔から「彼女」のような存在が愛おしくてたまらない。
しかしこんな思いを口には出せず、親しい人間以外には口を閉じていた。
時間が立ち、その思いはいつしか願いに変わっていったのも知っていた。
そう、ついにその願いが、オカルト好きな友人のお陰で実を結んだ、という訳なのである。
「すぐに、では疲れてしまいますよ、楽にして下さい。ほら、一緒にお茶を飲みましょう?」
彼女は困惑しながらも、私の訴えに応え、腰をおとし、私が用意した物に、黙々と手をつけ始めた。
…普通の人が見れば、恐怖しか覚えないであろう。
しかし私には、とても愛しくて仕方がないのだ。
腰の少し上まで伸びた黒い髪、それに反するかのような白い肌。
腕も細くて、少し力を入れたらすぐにでも折れてしまいそう…。
そういった風に「彼女」を見つめていたら、視線に気がついたのか、手を止め、私から目を背けた。
…あぁ、なんて可愛らしいの…!
口には出さずとも、顔に現れていないかが心配になっていた。
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