【版権】呪い

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…そういえば、彼女は喋るのだったかな? そんな事を考えていた時だった。 彼女が突然立ち上がり、私の方へと歩き始めたのだ。 流石に自分のやるべき事を果たさぬままでは、浮かばれないのだろう。 そのまま彼女は,私を驚くべき力で押し倒した。 そうして彼女は私に手を伸ばす。 …その時、無意識のうちについ口走っていた。 「…きれい。」 その声を聞いたせいか、彼女は差し出していた手を止めた。 その隙を、私は見逃さなかった。 気付けば、私が、彼女を押し倒していた。 私は、彼女の顔に触れた。 「…もっと…よく見せてほしい…。」 私の鼓動が今までにないほど高鳴っている。 今まで想いを馳せていた人が、目の前にいるから…なのだろう。 近くで見るとより、彼女が美しく、そして愛しく感じられた…だから、私は… 彼女と、唇を重ねあわせていた。 彼女の顔を覗きこむ。 困惑している彼女の顔が、みるみるうちに火照っていき、気付けば私は彼女に突き飛ばされていた。 そのまま彼女は、私に背を向けたまま、テレビの方へと走り出していた。 「…あっ、待って!」 もう少しで彼女がテレビに着いてしまいそうな所で、私は彼女を呼び止めた。 その声に気付いたのか、彼女は立ち止まった。 すると彼女はこちらを向いて、私に呟いた。 「…。」 そのまま彼女は、自分の場所へと、消えていった。 砂嵐が響く部屋の中で、私は最後の呟きを思い出していた。 彼女の声は聞こえなかったが、彼女の呟きの中身は、ハッキリと分かっていた。 「アナタノコト…キライジャナイ」 …もう、恥ずかしがり屋なんだから…。 次は彼女にいつ会えるだろう? 砂嵐が流れる部屋で、私はそう考えていた。 …終…
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