誰のせい?

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  「サドっ!」 サド……もとい沖田は、公園のベンチで横になっていた。 「あ-?…チャイナか。」 大きなあくびをしながら、 沖田はのそっと起き上がった。 「お前こんな時間から サボりアルか? …相当のヒマ人ネ。」  神楽が近づきながら いつものように悪態を吐くと、 沖田は“うるせ”と返し、 立ち上がった。 「…で?今日もすんのか?」 沖田の言葉に神楽は 大きな瞳をキラキラと輝かせ、 「お願いしますネ!」 と、ニカッと笑った。 …神楽は走った後には この公園に立ち寄り、 沖田に稽古をつけて もらっていたのだ。 「今日こそは俺が勝つぜィ。」 「私だって、負けないアル!」 …二人の勝負は、まだ一度も 決着がついたことがなかった。 「ほら、いつでも来いよ。」 そう言い、 沖田は竹刀を構える。 「おうネッ!」 と、神楽は大きく踏み込んだ。 …そしていつもここから、 二人の勝負がはじまる。 神楽からは ヒマ人と言われたが、 実は沖田は神楽と戦うために 毎日朝早く起きて 公園に来ているのだ。 …真剣で神楽を傷つけて しまってはいけないから、 わざわざ道場から 竹刀まで持ち出して。 だがなぜ神楽のために そこまでするのかは、 自分でもまだ気づいていない。 …まだ、自覚はしていない。 そして神楽はと言うと、 沖田と勝負をしている この時間が好きだった。 …いや。正確に言うと、 勝負の後に沖田から “昨日よりも強くなった” と言われることが なによりも嬉しくて、 その瞬間が好きだった。 今日もいつものように、 沖田から“強くなった”と 言われる……はずだった。  
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