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街には人影はなく、水を打ったように静かだった。
普段は待合や雑談で盛り上がるハチ公前も、別の世界へ飛ぶための改札口も。
ただ、その街をキャタピラ型の装甲を付けた機械だけが、徘徊していた。
『ウィルス感知。D.Bシステム起動。』
一見、なんの変哲もない建物の壁に、片腕にどっしりと構える機械銃の銃口を向けた。
発砲。まばゆい程の光を放つレーザー光は壁に当たる。
光線は、壁を蒸発させるように2進数のデータの破片が飛び散る。
穴の開いた壁から、淡い炎を纏い黒い影が悶えながら飛び出した。
奇声。
例えるなら黒板を引っ掻く耳障りな高音。
静かな街に響かせ、影は蒸発した。
『目標、蒸発。』
腕の銃口を下ろす。
『リカバリー、開始』
蝶の形をした小型の機械が数匹、ポッカリと開いた穴に入って行く。
すると、穴はゆっくりと元の形に戻っていった。
この流れの作業が、Real全体、いたるところで行われていた。
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