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ウルフが地を蹴る!
残像すら残るほどの速攻で、青年との距離を一気に詰め、飛び掛かる。
しかし、青年は飛び掛かる一瞬を見切り、前転で避ける。
ウルフの前脚の爪は、青年が立っていた地面をえぐり、三股の後を深々と残した。
青年は、ヒュウ。と軽く口笛を吹き、爪痕に多少の驚きを示した。
その態度に苛立ちを感じたかは定かではないが、ウルフは体勢を低く構え、低く唸り、青年を威嚇した。
「どうした?お出でよポチ。ここだここ!」
唸る機械のウルフに大して、青年は両手を叩き挑発する。
青年とウルフの距離は4、5メートル程。
ウルフは身体全体をバネにして、渾身の力で飛び掛かった!
「…サーチ。」
青年の静かな声。
右手に術式が浮かび上がる。
青年は体勢を極限まで低くし、大きく一歩を踏み出し、飛び掛かるウルフの腹部に、右手を、槍のように突き刺した。
硬い装甲に覆われた腹部をものともせず、その手を食い込ませた。
宙づりの上体で硬直するウルフ。
腹部の露出した内臓から、バチバチと電気が漏れだしていた。
「…あぁ、メンテナンスか。道理でD.Bが使えるわけだ。」
青年は一気に手を引き抜く。
ガシャリと音を立て、ウルフは動かぬ物体へと朽ちた。
世界 完
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