現実

3/5

1408人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
       ついこの間、その親友の病室を覗いた。    暗い個室、らしくない顔でよく眠っていた。    片腕は、もとからそうだったかのように、綺麗に切断されていた。   「こんな事って…あるんですね。」    病室の椅子に俯くように座っていた、西園 愛【にしぞの まな】は静かに呟いた。    いつしか、達人に見事なまでの毒舌と蹴りを放ったショートヘアの女の子だ。   「毎日、来てるんだってな?」   「はい。まだ、僕には達人先輩に返し切れてない貸しがありますから…目覚めた瞬間、また向こうに送り帰すんですっ!」    愛は意気揚々と拳を奮う。なんにせよ、達人に余生はないのだろう。   「……ないんですか?」   「…え?」   「医者に言われました…達人先輩、未帰還者病だって!…これまでの例に…助かった例はないって…!!」    愛は、また下に俯き、身体を静かに震わせていた。   「ないんですか?この能天気を起こす方法が…もう…お話…出来ないんですか…?」      雫が、床に落ちた。        それは、俺が達人を救おうと決意した3日後の出来事だった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1408人が本棚に入れています
本棚に追加