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ついこの間、その親友の病室を覗いた。
暗い個室、らしくない顔でよく眠っていた。
片腕は、もとからそうだったかのように、綺麗に切断されていた。
「こんな事って…あるんですね。」
病室の椅子に俯くように座っていた、西園 愛【にしぞの まな】は静かに呟いた。
いつしか、達人に見事なまでの毒舌と蹴りを放ったショートヘアの女の子だ。
「毎日、来てるんだってな?」
「はい。まだ、僕には達人先輩に返し切れてない貸しがありますから…目覚めた瞬間、また向こうに送り帰すんですっ!」
愛は意気揚々と拳を奮う。なんにせよ、達人に余生はないのだろう。
「……ないんですか?」
「…え?」
「医者に言われました…達人先輩、未帰還者病だって!…これまでの例に…助かった例はないって…!!」
愛は、また下に俯き、身体を静かに震わせていた。
「ないんですか?この能天気を起こす方法が…もう…お話…出来ないんですか…?」
雫が、床に落ちた。
それは、俺が達人を救おうと決意した3日後の出来事だった。
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