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ふと見てみると……なんか井沢さんの背中に何かスタンドみたいなのが見えた。
しかも、物凄く禍々しいやつ。
何コレ、怖い。
ちびりそうだ。てか、正直少しちびったかもしれない。
「……吉岡」
「あ? なんだよ」
「少し、二人きりで話がしたい。こっちに来てもらえるか?」
井沢さんが笑顔で指差すのは、部屋の外。
まぁ、笑顔っつっても、アレな笑顔だけれども。
「やだよ、面倒くせぇ。なんでオレがテメェの言うことをきかなきゃならねぇんだ」
「そう言うな。たまにはいいだろう?」
「……ふん。何か考えてやがるな? まぁ、いい。上等だ。乗ってやるよ。オレと二人きりになったこと、腹一杯後悔させてやる」
黒岡さんはそう言うと、井沢さんと一緒に部屋の外へと出て行った。
…………。
五分後。
「いやあああぁぁぁぁぁ!!」
なんか部屋の外から、断末魔も悲鳴が聞こえてきた。
…………。
そして更に五分後。
「……よし!それじゃあ、次の奴行くぞ、お前等ぁ!」
そんな言葉と共に、黒岡さんが部屋に戻ってきた。
「え、あの、吉岡さん……? 井沢さんは……もういいんですか?」
「クソ兎上駆が!い、井沢様と呼べ!」
「えぇ!?」
「あ、あの方は……井沢様はもういいんだ!……と、いうより、あんなにお優しく、キャラが濃く、そして凛々しく素晴らしい方に、オレみたいな人間がかけられる言葉なんて無ぇんだよ!」
「…………」
あの黒岡さんが……涙目だった。
顔面蒼白で、ガタガタと足が震えている。
「い、井沢さん……」
とりあえず俺は、黒岡さんの後に部屋に戻ってきていた井沢さんの方を向く。
「……なんだ、少年?」
「吉岡さんに……一体何をしたんですか?」
「何もしていない。ただ、俺とアイツの上下関係を改めて明確にしてやっただけだ」
「……ちなみにどんな手段で?」
「……知りたいのか?」
「…………いえ。やっぱりいいです」
俺は首を横に振った。
世の中には、アレだね。
やっぱ知らないほうがいいことがたくさんあるわけで。
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