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「はっはっはっは!!」
と、ここで。
危ない雰囲気が漂う夕梨に迫られている俺の姿を見て……黒岡さんが心底楽しそうに笑い始める。
「ざまぁねぇな、兎上駆!愛する彼女に怯える気持ちはどうだ? 格別だろう?」
「…………」
しかし、その黒岡さんの声に反応したのは俺ではない。
……夕梨だった。
彼女は、ゆっくりと……恐ろしいくらいにゆっくりと黒岡さんの方を振り向く。
「さぁ、もっと怯えた表情をオレに見せやが―――、」
ヒュン。ザク。
そして次の瞬間。
黒岡さんの頬をナイフが掠め、勢いよく背後の壁に突き刺さる。それは、先ほどの俺が受けた仕打ちと、全く同じ光景。
無論。
ナイフを投擲したのは……、
「吉岡さん。ちょっといい?」
ものすっごい笑顔の夕梨です。はい。
「な、なな……」
"一歩間違えれば死"というものを身近に受けたのだ。流石の黒岡さんも冷や汗を流し……絶句している。
それでも夕梨はお構い無しに、黒岡さんへと歩み寄り……手に持ったナイフをギラつかせた。
「ねぇ、どうしてそんなに楽しそうに笑ってるの吉岡さん? こうして私が駆にナイフを投げなくちゃいけなくなったのは……もとはといえば、吉岡さんのせいなんだよ? ねぇ? 分かってる?」
「……ッ」
「素直に反省してくれないと困っちゃうよ。私の知ってる吉岡さんは、そんな人じゃないよ? だからちゃんと私と駆に謝ってね? ね? ね? それくらいできるでしょ?」
光沢のない暗い目のまま、近過ぎるくらいに黒岡さんに詰め寄る夕梨。
ぶっちゃけ、客観的に見てるだけで超怖い。
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