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「て、テメェ……!希薄キャラのくせして、オレに意見を――、」
「謝れないの? あ。そっか、分かったよ。分かっちゃった。吉岡さんは、ああすることによって、私と駆を喧嘩させようとしたんだね? 喧嘩させて、私と駆の仲を引き裂こうとしてたんだね? 酷いよ」
「……はぁ?」
グイッ。
夕梨の持っていたナイフが、黒岡さんの喉元寸前に突きつけられた。
「うッ!」
「どうして? どうしてそんな意地悪するの? 私と駆がとってもとってもラブラブだから、見ていて嫉妬しちゃう気持ちは分かるよ? だけどどうして? 私と駆はお互いに愛し合ってるんだから、それは仕方のないことでしょ? どうして? どうして吉岡さんはそれを分かってくれないのかなぁ。哀しいなぁ」
「……お、オレは……」
「もしかして、」
夕梨が、ナイフを握る手に更に力を込めた。
「もしかしてお前、私の駆を寝取ろうとしてるんじゃねぇだろうなぁ?」
『ひッ』と短く言葉を漏らし、後ずさる黒岡さん。その表情は、恐怖一色に染まっている。
「ざけんなよ。駆は私のものなの。駆は私だけを見てれば幸せだし、私だけと話してるだけで十分なの。私さえいれば、駆は大丈夫なの。私だけを愛してれば、駆はそれでいいのよ。あんたみたいなビッチが、横から私達の関係に割って入ってくるんじゃないわよ。分かる? 分かるよね? 分かるって言いなさいよ」
「わ、わわ、わか……」
恐怖のためか、うまく呂律回ってない黒岡さん。
それに苛立ったのか、夕梨は持っていたナイフを大きく振りかぶり……壁に突き刺す。
「言えって言ってるだろ!!」
「は、はは、はい!わ、分かりました!」
「それじゃあ、謝って。今世紀最大のベストカップルである私達の仲を、未遂とはいえ引き裂こうとした極刑ものの罪を謝罪して。今すぐに。しろ。謝れ。今すぐに謝れよ」
「ご、ごご、ごめんなさ……い」
「…………」
その言葉を聞いて……夕梨はそっと壁に突き刺さったナイフを引き抜いた。
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