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「……ふん。ならいい」
茜さんはそう言って、プイっと横を向いてしまった。
……助かった。
「しっかし、吉岡の野郎、下らねぇことを言いやがって……」
「ところで茜さん、ちょっと顔赤くなってません?」
「ぶ っ 殺 す ぞ ?」
「ホントすみませんでした」
「ぶ っ 殺 す ぞ ?」
「謝っても止まらないって、反則でしょ」
そうこうしていると、茜さんは崩れた壁の外へと歩いていった。
そしてしばらくして、ぐったりとした黒岡さんを連れて戻ってくる。
息は……ある。多分。
「……さて。もうコイツには脅威も何も感じないが、一応元の吉岡に戻しておくか」
茜さんの提案。
勿論、俺としては賛成だ。
けれど、
「戻すって……どうやってですか?」
「ん? そりゃお前、眼鏡をかければ戻るんじゃねぇのか?」
「いや、だって。前の時と違って、吉岡さんの眼鏡はぶっ壊れちゃってるじゃないですか」
「あ」
固まる俺達。
そうだよ。封印の眼鏡が無いと、どうしようもないじゃんか。
「ど、どうするか……」
「どうしましょうね……」
しばしの間、あれこれと思考を巡らせる俺と茜さん。
その結果、
「……とりあえず、代わりのモノをかけておけばいいじゃね?」
という結論に辿り着いたわけで。
「でも、茜さん。代わりのものって言われても……俺、何も持ってませんよ?」
「何でもいいんだよ、何かねぇのか、何か!」
「そうですね……。あ、竹輪なら持ってますが」
「なんで竹輪を携帯してんだよ。流石にそれはダメだ。却下」
「じゃあ茜さん、何か持ってないんですか?」
「……んー……」
ゴソゴソとポケットを探る茜さん。
すると、
「あ」
「どうかしました?」
「サングラスなら持ってた」
「それだぁぁぁッ!!」
むしろそれしか無いでしょぉ!
というわけで俺は、茜さんがポケットから取り出したサングラスを受け取る。
てっきりランナー用とかのサングラスかと思ったが、違う。
明らかに、本格的なサングラスだった。ホラ……あの、SPとかシュワちゃんとかがつけてるような奴ね。
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