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「おはよう、爺や。例の人物は見つかったのかしら?」
「はい。場所は日本。それも、北部の方にいると思われます」
「わかったわ。あとで資料を頂戴。それと、すぐにジェット機を用意させて」
「かしこまりました」
先ほどまでとは打って変わって、やや高圧的な態度でクリスティーナは指示を飛ばす。
爺やと呼ばれた白鬚の老人は恭しく一礼すると、踵を返して立ち去って行った。
残された彼女は神をかたどった像を背に、口角を持ち上げ一人ほくそ笑む。
「うふふふ……。やっと見つけましたわ。ほんと、すばしっこい獲物ですこと」
クリスティーナは笑いをこらえながら肩を震わす。
その動きは次第に大きな感情の波となり、彼女を歓喜の渦へと飲み込んだ。
「あなたがどれほど逃げ回ろうと、必ず私が仕留めてさしあげますわ。首を洗って待っていなさい、レイチェル・ワイアット! おーほっほっほっほっほ!」
右手を口元に当て、厳かな雰囲気を完全にぶち壊しながら、クリスティーナは高らかに笑う。
そんな彼女の背後で、残忍な神の像はうっすらと、不気味に微笑んでいるのだった。
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