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あるところにヨレヨレのスーツを着た50過ぎの政治家がいました。 あるところに白と黒と黄色の毛色をしたブチ猫がいました。 二人は政治家の住むマンションのゴミ捨て場で出会い、大変仲良しでした。 二人はマンションの非常階段で話しをするのが好きで、いつもそこで政治家は一本のコーヒーを飲み、猫はミルクを飲むのが日課でした。 二人は毎日色んな話しをしました。 猫は最近の縄張り争いについて、政治家は社会の仕組みについて話しました。 ある時、政治家が猫に言いました。 「私はみんなが幸せになってほしいといつも願っている。もちろん、君も幸せになってほしいとね」 猫は表情の変わらないまま政治家の話しを聞いていました。 「最近、私のライバルがマスコミに叩かれてね、そのお陰で近々私は、大きく出世できそうなんだよ」 政治家は嬉しそうに握り拳を作り、興奮した様子でした。 そんな政治家を見て猫は一言いました。 「他人の不幸を見て、幸せを見つけているようじゃ、誰かを幸せにはできやしないよ」 そして、猫はミルクを全部飲みほしてしまうとマンションを去っていきましたとさ。 少し風の生暖かい春の日のお話。
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