懺悔の散歩

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 ごめんね。  少女は夜道を歩きながら、ぽつりと呟いた。  雨上がりの蒸し暑い空気と、湿った地面、そして、朧げに輝く月。今日は、色々な箇所があの日と似ていた。  少女が過ちを犯した、あの日と。  ごめんね。私、知らなかったの。知っていたら……ううん、そんなのが言い訳にならないのは分かっている。分かっているけど……。  少女は橋を渡り、道を右に曲がった。曲がってすぐに見える、右側の車一台が入るか入らないかのスペース。こちらに曲がるまでは、絶対に見えない死角で、自分が以前、バイクに乗って潜んでいた場所だった。その場所を見て、少女は胸が焼け付くように熱くなるのを感じた。出来れば、目を反らしたい。だが、それは少女には決して許されないことであった。  何故なら、少女は罪人だからである。  ごめんね。そもそも、あれはしてはいけないことだった。それも分かっている。でも、私には、私なりの役目があった。目的があった。過ちを犯してでも、やらねばならないことがあった。だから……。  少女の足取りが重くなる。それには、外的要因は一切無く、もっぱら、少女の意思から来ているものだった。人間は、無意識のうちに自分の好きなほうを選ぶ。その逆も然り。少女の足が重くなったことは、至極当然のことなのである。だが、少女はその歩を緩めることはなかった。  少女は、そこに行くことを、償いと信じていたから。  ごめんね。ごめんねごめんね! 謝って許されるわけがない、それも分かっている! でも、これしか、これしか私には出来ないの! 大切な友人である貴女と血の繋がった、ただ一人の人物を奪ってしまった罪を償うには!  やがて少女は、その場所に着いた。  自らが罪を犯した、その場所に。  もしも、組織なんてなかったら、普通の仲の良い友人でいられたら。  少女は、ふと空を見上げた。すると、キラリと一つの星が空を流れ、そして消えた。  ……私の罪は、あんな一瞬で消えるものじゃない。どうせ願うなら、いつまでも消えない、あの一滴の、星の光に願おう。  どうかあの娘に、幸せが訪れますように。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!