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「吉見さん、中学の時は好きな人いなかったの?」
ドキッとした。
とても答えずらい。
「いるには、いたんだけど」
私の表情が暗くなったのを察したのか、彼女が少しあわてたそぶりをしていた。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「大丈夫だよ。別に振られたってわけじゃないから。片思いのまま終わっただけだから」
少し昔のことを思い出した。
私は彼に何も出来なかった。
気持ちを伝えることも。
いや、そうすることが許されなかった。
あの時、違う道を選択していれば今とは違う生活を送れたかもしれない。
「わかるな、私も中学で好きな人いたけどさ、なにも言えないまま卒業したから」
「それに今思えば、どうしてあんな人を好きになったかわからないしね」
だからそんなに落ち込まないで、って彼女は私に肩を二度トン、トンとたたいた。
慰めてくれたのだろう。
私はなんか照れてしまって、「ありがとう」っと言えなかった。
そんな私を見て彼女は笑いながらこう言ってくれた。
「これから一緒に新しい恋探そ。私は湯川愛子。好きに呼んでくれていいからね」
ここにきての自己紹介は、こっぱずかしいものだった。
「うん、よろしく。吉見あいこ、私も好きに呼んでくれていいよ」
精一杯の笑顔で彼女に答えた。
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