第三章 贄

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 鮮やかに輝く花火が油に引火し、ぼっという音と同時に火が広まる。  体中に火が回ったウロコの民が、苦しそうに地面をのた打ち周り火の幅を広げていた。  水城は調子づいてきたのか、打ち上げ花火や地面に置いて楽しむ花火に火を付けて、筒の先をウロコの民に向ける。  ポンポンときれいな火が危なっかしく飛び、ウロコの民が道を開ける。  海人たちはチャンスだと言わんばかりにそこを突っ切った。  比丘尼がまた油を道に投げ捨て、火が引火する。  水城は後ろを振り返り、色鮮やかな赤や黄緑、黄色の玉を「煙幕花火っ」と叫んで火の中に投げ込む。  すると実にカラフルな煙が立ち込め、煙幕花火独特の匂いがした。  急いで水城は走って海人たちのところへ駆け寄る。  これでウロコの民が巻けると、海人は必死ながらも笑みをこぼす。 「使えるな、それ」  「懐かしいでしょ、煙幕花火なんて今あんまり見ないからね。まだまだあるよ」と水城が笑う。  「発想だな。何が武器になるか分からない。若さか。頭が柔らかい」感心したように入江が言った。
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