第三章 贄

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 「灯台へ?」水城が首を傾げる。  「ああ。生き残った村の人たちを灯台に避難させたんだ。食料もそこにあつめた。…そこからどうするか、まだ考え中だけどね。君たちもそこに避難してくれるかい?」  海人は首を横に振る。 「俺たち、ここで何があったのか確かめに来たんだ。この社に、何かヒントがあるんじゃないかと思って」 「え?」  海人は社の中に入り、中のものを物色する。社の外では鮫島刑事と入江が握手をし、自己紹介を始めていた。  一体ここで何があったのか、疑問や、自分たちが見たこと聞いたことを教え合っている。 大人の会話、というやつだ。  海人は置いてある鏡の裏を見てみる。何もないな、と思いながら祭壇の板をひっくり返してみると、そこには、何やら崩したような達筆で文字がつづられていた。  こんな文字、読めるわけないじゃんと海人が板を戻そうとした時、頭に何か砂嵐のように酷くぶれた映像が浮かび、映像と文字が重なり合う。
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