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ゲシュタルト崩壊の、あの普段使っている文字が文字でないように見える混乱が、海人の頭を襲う。
この文字が、海人は読める。何故か分からないが、素直に頭で読み取れる。
「分かる。読める…なんで…。俺、こんな文字習ったことないのに」
海人はボソボソと呟いて、もう一度言葉を確認する。
愚かなる人よ
不死がほしくば
忌まわしき儀式を続けよ
我が憎しみを血と肉で和らげ
醜く生きていくがいい
贄なる者の苦しみを
その命で知るがいい
呪われたこの地に
贄の憎しみと苦しみ
戒めてくれよう
暁の岬にて
血ぬられた刀をもちて
命を捧げよ
儀式が途切れし時
贄再び怒れり
力を取り戻す
最後まで言葉を見ずに「どういう…」と海人はつぶやき、目を進めたとたんにまた記憶にぶれが生じる。
我朽ちぬものなり
怒りの塵になりて
海に帰ろう
この言葉で、ただならぬ嫌な感覚が海人の身を震えあがらせる。さっきの知らぬ記憶の残像が頭をかすめ、すぐに消える。
何か、思い出しかけたような。
けれどかきむしりたくなるほど不快な気持ちになる感覚で、思い出したくないと願ってしまう。
千の言っていたきっかけがあれば思い出すという記憶。今文字を読んだ瞬間が、海人にとってのきっかけであることに違いはなかった。
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