一章

9/19
前へ
/22ページ
次へ
 ちなみに、髪の長さは俺の好み、ド真ん中だ。肩よりも、少し長いくらい。体型は……うん、残念な感じにスレンダーだけど。まあ。これはこれで需要はあるだろう。  ○○はステータスという格言(語弊)があるくらいだし。  そんな訳で、類まれなる容姿を持ち、人の目を引く彼女たちは、しかし性格においては、まるで真逆だ。  姫華が、その圧倒的なカリスマを持って大衆を『俺について来い』みたいな感じでグイグイ良い方向に引っ張っていく偉丈夫……いや、偉丈婦(女丈夫とはあえて言わない)然とした女傑だとすれば。  廣畑(ひろはた)さんのほうは、大衆の中心にて、みんなを微笑みで励ましならがら二人三脚みたいに一緒になって進むタイプだろう。  聖母マリアも真っ青なくらいな純粋な方でもある。  ――今日この日、この時まではそう思っていた。  ファン倶楽部すらある彼女は、自身の席でノートパソコンを広げ、涼しい顔をしてエロゲをしていた。  俺の目に飛び込んできたのは、そんな光景だった。  我が目を疑うとか、言葉に詰まるとか、まあ、これまでの人生でいろいろ思ったことはあったけど、この時ほど自分の正気を疑ったことはない。  俺ってこんな幻を見るくらい欲求不満だったのかと悲しくなったくらいだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

256人が本棚に入れています
本棚に追加