一章

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 誤算があるとしたらエロゲに熱中しすぎたことだろうか。 「ちょっとあんた、何か言いなさいよ」と、後ろからバイオレンス生徒会会長が声をかけてくる。  俺が壁になって教室の中が見えないのだろう。でもだからと言って、今、その発言は空気が読めないにも程がある。  とりあえず姫華のことはさっくりと無視し、廣畑さんに謝ろうと口を開こうとすると(なんで俺が謝らなきゃいけないのかは全くわからないけど)、さきに彼女が、 「いっ、」  い? 「いや―――――――――っ!!」鼓膜が破れるんじゃないかってくらいの絶叫を上げた。  びっくりしたのか、姫華の腕の力が一瞬強まってオちかけたけれど、すぐにするりと首絞めが解除された。ごほっ、死ぬかと思った。  廣畑さんは多少もたつきはしたものの、それでもものすごい速さでノートパソコンを閉じ、バッグに突っ込んで走り出した。そして、俺がいるじゃない方のドアから飛び出していく。  何かきらりと光るものが一筋、尾を引くようにして流れたのを目にした俺は、無意識のうちに走り出していた。 「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」無視だ。  さっき通ったばかりの廊下を走り、廣畑さんを追いかける。だんだん近くなる廣畑さんの背中から、昇降口のところで追いつくだろうとあたりをつける。
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