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廣畑さんに追いついたのは、あまりひと気のない道で、彼女はモヒカンにからまれていた。
おおかた、泣いてる彼女を慰めるという名目で気持ち良いことしようとラブホに連れ込もうとしているのだろう。単純にいい人だということは考慮に入れないことにする。
よって、俺はそいつを問答無用でいきなり蹴りとばした。
「……ぐぁっ!」
これでも、俺は昔にあったとあることをきっかけに、ガキの頃から生ける武神にして戦神・闘神、数々の異名をとる常勝無敗の武道家である神祇豪(じんのぎごう)に師事しているのだ。普通の人には負ける気がしない。
よって、単純に善意から廣畑さんに声をかけただけかもしれないモヒカンは5メートル浮遊し、5メートルは地面を転がった。手加減したし、死ぬことはないだろう。
けれど、ここからはやく離れるに越したことはない。
もとからまるい目をさらにまん丸にしている廣畑さんの手を握り、俺は少し離れた公園まで引っ張っていった。こちらも問答無用だ。
遊具がゾウさん型の滑り台とロケット型の滑り台と龍を模した滑り台しかない、変な公園に着いたところで廣畑さんの手を離す。
そこで、俺は廣畑さんと改めて対面した。彼女は安堵の表情を浮かべていた。……が、俺の顔を認めると、すぐに顔をゆがめる。そして、瞳の端に雫をため始めた。
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