一章

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 くそほどの役にも立たなかった学習合宿なるイベントもつつがなく終え、俺を待っていたのは、担任との二者面談であった。  いや、俺を待っていた、とは少し語弊があるか。正確には、俺が通う学校の三年生を待っていたのは、だろう。  何のことはない。どこの高校でも普通にやるだろう、進路に関する面談だ。とはいえ、今はまだゴールデンウィークを開けて間もない。少しばかりそれは早いような気もする。  が、実は気がするだけじゃなく、実際この学校にしてはその手の面談をするには時期尚早である。常なら、夏休みにするのが最初なのだ。  では、何で梅雨もまだ来ぬ五月上旬にやるのかと言えばなんてことはない、先(さき)の学習合宿なるたわけたことがあった理由とも重なるのだが、単に去年の三年どもの進学実績が芳(かんば)しくなかったからだ。  今年は何としても進学実績を上げたい教師の意気込みと大人のしがらみの結果なのだ。ただでさえ少子化と謳われる現代日本、親も進学の悪い高校には子供を通わせたくないはないだろう。  と、まあそんな感じである。
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