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二人の間に、しばし沈黙が流れる。
その間にも、風が強く吹いたり、弱く吹いたりしている。
「わからない」
しばらくして、金髪の青年が口を開く。重く、つぶやくような小さな声。強く風が吹けば掻き消されそうな、そんな声だった。
「わからねえ、だぁ?」
黒髪の青年が、怒気をはらんだ、力強い声を出す。
同時に、さきほどまで弱かったはずの風も、それに合わせるように強く吹き始める。
「見てただろう!? お前らが英雄、英雄とたたえられる横で、俺はどんな扱いを受けた!? 疫病神、でしゃばり、英雄たちの汚点! そう言われたのはお前らだって知ってるだろうが!」
「ぐ……、それは――」
「『それは』何だ!? 牢獄に入れられた俺を、見てみぬふりをしてきた、そんなお前に言えることなんてあるのか!?」
もはや狂気じみた黒髪の青年の怒声に、金髪の青年は何も言えずにいた。
それもそうだ。現に彼は、この黒髪の青年を“見捨てた”のだ。
世界が危機に陥った時、この青年は彼と共に戦った。
しかし青年は、牢獄に入れられたのである。なぜか? 青年が、奴隷という身分だったからだ。
自分は、そんな彼を救えなかった。いや、救おうとしなかったのだ。
英雄という身分にすがりついていたい。そんな気持ちが、自分にはあったのかもしれない。
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