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少年、酒井竜弥(サカイリュウヤ)は、奇妙な現象に襲われていた。
なんとも奇っ怪な夢を見た。青年と荒野で対峙する、そんな夢だ。
胸につっかえる。理由はわからない。当然ながら、そんな状況に置かれたことがある、というわけではない。
しかし、なぜか脳裏に強く映像が焼き付いている。夢よりは、昔の思い出したくないものを思い出した、そんな感じだ。
気分が悪い。吐き気がする。おそらく、体が拒絶しているのだろう。
辺りは真っ暗。電気を消しているからではない。真っ暗な、何もない空間。その中心に、なぜか自分がいる。目が覚めたら、そこに自分がいたのだ。
しだいに気分が回復してくる。同時に、竜弥は薄気味悪さを感じ始めた。
(ここ、どこだよ? 何なんだよ?)
何一つ見えない不気味な空間に、竜弥はその大きめの目で、辺りをきょろきょろと警戒するように見回している。
低い鼻や頼りなさげな顔立ちが、不安げな表情をさらに際立たせていた。
おどおどしながらも、一歩踏み出そうと試みる。
しかし、なかなか踏み出せない。もし足場がなければどうなるか。何か得体の知れないものがあったら……。
彼はもともと慎重、もとい臆病な性格である。ましてや不気味な空間の真っ只中にいるのだ。一歩歩くだけでも、相当な勇気を必要とする。
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