第十ニ話 やっぱりお前だったのか

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「では聞きたいことがいくつかある。 答えていただこうか。」 土方がぎろりと睨みながら夜啝に詰め寄った。 「何ですか?」 にこやかに夜啝は返す。 「お前は長州の間者か?」 「いいえ?ただの一般人です。」 「ではなぜ長州の羽織を羽織っている。」 「これ借り物なんです。」 「誰から借りた?」 「長州の人。名前は聞いてません。」 「いつ借りた?」 「永倉さんと彼が対峙した時に。」 「その血だらけの脇差しはなんだ?」 「永倉さんからお借りした物です。 この血は羽織を貸して下さった方のものです。」 「その大量の血…どこを刺したんだ?」 「彼の横腹に風穴を作りましたから。」 土方は目を見開いた。 「風穴を!?お前がか!?」 「はい。」 『『ザワッ』』 周囲は騒然とする。 「あの細腕で!?」 「冗談だろう。」 「脇差しなんかで穴が空くわけ無いだろう。」 「静粛に!!!」 土方が大きな声で制すると周囲はしん………と静かになった。 「…柏崎。」 「はい。」 「自分は罪を理解しているか?」 「いいえ。」 夜啝はきっぱりと言い切った。 土方は黙り込む。 どうやら悩んでいる様子だ。 (早く連れてってよッッ!!吐くっ!!)
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